記事ID147445のサムネイル画像

ブラジルで起きた悲惨な原子力事故「ゴイアニア被曝事故」とは?

1980年代のブラジルで、『ゴイアニア被曝事故』が起きました。これは、2人の青年による盗難から起きた悲惨な原子力事故だったのです。そこで今回は、『ゴイアニア被曝事故』についての概要やその後などについて迫ってみたいと思います。

『ゴイアニア被曝事故』はどんな事故?

ゴイアニア被曝事故とは、どんな原子力事故だったのでしょうか?それは廃病院から放射性物質が持ち出されたことから始まります。ゴイアニア被曝事故の概要についてご紹介します。

1987年の原子力事故

ゴイアニア被曝事故は、1987年にブラジルのゴイアニア市で発生した原子力事故とのことです。廃病院内に放置されていた放射線医療機器が2人の青年によって盗難にあい、放射性物質が廃品回収業者に売られます。

 

その結果、放射性物質によって249人が被曝し、4人が死亡するという悲惨な事故が発生しました。ゴイアニア市の周辺住人は、被爆したことで差別を受けることになり、事故による影響はブラジル全土まで広がることになります。

『ゴイアニア被曝事故』の発生場所や住所

ゴイアニア被曝事故は、南米ブラジルの首都ブラジリアンの南西210kmに位置するゴイアニア市で発生しました。ゴイアニア市は、ブラジルのゴイアス州の州都です。緑豊かな都市で世界で2番めに居住者が多い森林地帯として知られており、市街地は切り開かれた森林地帯にあります。

 

2020年の時点で人口は150万人ですが、1987年当時は120万人ほどだったと言われています。

廃病院から回転照射体を運び出す

ゴイアニア被曝事故は、廃病院から放射線治療装置の回転照射体が盗み出されたことから始まります。移転が決まり廃病院となった民間放射線治療病院内に、回転照射体が置かれていました。回転照射体は所有権のトラブルが発生して、病院内に放置されていたといいます。

 

高額で売れると考えた2人の男が、回転照射体を運び出します。自宅まで持ち帰った2人は、すぐに体調がおかしくなりますが、線源容器を解体することに成功します。容器の中から顆粒状のセシウム137を取り出した2人は、廃品業者に販売してしまいます。

セシウムを体に塗る

セシウム137を買い取った業者は、すぐにそれを自宅に持ち帰ります。セシウム137は混じった樹脂と反応して、青白い光を放っていたといいます。光る粉末状のセシウム137を気に入った業者は、家族や友人、親類に見せて自慢したといいます。

 

光るセシウム137を見た人たちは珍しいこともあり、手で触れるだけでなく自分の体に塗る人もいたようです。セシウム137に触れた手で食事をしたせいで、体内に被曝した人もいたといいます。

放射線障害で4名が犠牲に

業者はセシウム137を知り合いに配ったりもしたそうです。体にセシウム137が付着した人間や動物が移動することで、急速に汚染を広げていったと言われています。次第に体調不良を訴える人は増えていきました。

 

事故の発生がわかるまで時間がかかったために被害は拡大し、最終的に4名が放射線障害で死亡しました。

2週間後に原因が判明

病院では大勢の人が体調不良を訴えていましたが、ゴイアニア公衆衛生局はアレルギーや風土病の可能性を考えていました。しかし、人数はどんどん増えていきます。廃品業者の妻が、セシウム137を公衆健康局に届けたことがきっかけで、放射線被爆事故の可能性を考える人間も現れます。

 

放射線医学専門医が測定を行う2つの測定器が測定限界を超えてしまい、放射線被爆事故が発生していることが判明します。放射線治療装置の盗難からすでに2週間が経過していました。

現場の写真は残っている?

汚染は広範囲に広がり、放射能除去作業の結果として家屋の解体や表土の入れ替えなどが行われました。現場での放射能除去作業を撮影した写真は、現在でもネットでも見ることが可能です。

『ゴイアニア被曝事故』のその後はどうなった?

ゴイアニア被曝事件は、事件発覚後どうなったのでしょうか?被爆した人や亡くなった人の人数、最初に放射性物質を持ち出した若者がどうなったのかなどをまとめました。

周辺住民の避難と計測

被曝を少しでも減らすため、ゴイアニアの住民は、オリンピックスタジアムに隔離されることになりました。住民の避難だけでなく、汚染源を特定するための計測も行われたといいます。最初の計測は、湿度の高い日に自動車とヘリコプターを利用して行われました。

 

自動車を使用して、2000km以上の道路、ヘリコプターで67平方kmの広範囲の計測が実行されました。

死亡が相次ぐ

被曝を疑われた人数は、11万2000人にも及びました。検査の結果、249人の被曝が確認され、除染を受けた後に重症者の20人は海軍病院に入院しました。入院した患者の内、4人は大量に被曝していたため、亡くなっています。

 

亡くなったのは、廃品業者の38歳の妻、6歳の姪、22歳と18歳の従業員でした。

右腕の切断

最初に放射線源格納容器を盗み出し、自宅に持ち帰った2人の青年はどうなったのでしょうか?2人はかなり重症でしたが、死ぬことはありませんでした。しかし、1人は右手を切断することになり、もう1人は右手の指を何本か切断しています。

『ゴイアニア被曝事故』で影響があった?

ゴイアニア被曝事故は、その後にどのような影響を与えたのでしょうか?

その影響は、ゴイアニアにとどまらずブラジル全土、そして世界中にまで及びました。ゴイアニア被曝事故の影響についてまとめました。

ブラジルの農産物などの価格が下落

ゴイアニア被曝事故の風評被害により、ブラジルでは農産物などの価格が大幅に下落することになります。価格は、農産物は5割減となり工業製品は4割減となっただけでなく、ブラジル中で不買運動も発生します。結果としてブラジル全体に大きな経済的打撃を与えました。

 

ゴイアニア市周辺では除染処理が行われましたが、多額の処理費用も大きな財政負担となったといいます。ゴイアニア周辺に住んでいた人は、非汚染証明書の携帯が義務となり、証明書を所持していない場合は、タクシーへの乗車もホテルに泊まることも許可されませんでした。

 

 

放射線照射装置の取り扱いが厳重に

ゴイアニア被曝事故の影響で、放射線照射装置の取り扱いは以前より厳重になりました。放射線照射装置を厳重に管理していれば、簡単に持ち出すことはできません。盗難が起きたことよりも、廃病院に装置を放置していたことが一番問題とする意見が多いです。

 

装置を放置していた廃病院は治安の悪い地域であり、持ち出される危険性は高かったと言われています。万が一、テロ組織に持ち出されていたら、さらに大きな被害を出したと指摘する意見もあります。

 

放射線照射装置を長期間放置すると機械が腐食して、放射性物質が漏れだす可能性もあります。放置するだけでも危険な放射線照射装置が、厳重に管理されるようなったのは当然といえるでしょう。

放射性物質の怖さが植え付けられた

ゴイアニア被曝事故はブラジルだけでなく、放射性物質の恐ろしさを世界中に植え付けることになりました。病院関係者はもちろん、市や州も放射線照射装置を放置した責任を問われています。

 

非汚染証明書を携帯しなけらばならないゴイアニア市周辺の住人は、差別などの二次被害を長期間受けることなります。

『ゴイアニア被曝事故』は漫画にもなった?

ゴイアニア被曝事故は、ドキュメンタリー映画が製作され日本のテレビ番組でも特集されました。現在は漫画動画も作られ、YouTubeで公開もされています。ゴイアニア被曝事故の漫画動画などの情報をまとめました。

漫画動画が作成された

ゴイアニア被曝事故を解説した漫画動画も、YouTubeなどに投稿されています。漫画のセリフや解説を音声で読み上げる動画が多いです。脚色など事実と異なる部分もありますが、ゴイアニア被曝事故の経緯をわかりやすく理解できる動画になっています。

映画にもなっている

ゴイアニア被曝事故のドキュメンタリー映画「Césio 137 - O Pesadelo de Goiânia」も制作され、1990年にブラジルで公開されています。この映画は日本では「セシウム137:ゴイアニアの悪夢」というタイトルがつけられています。

『アンビリバボー』で取り上げられた?

ゴイアニア被曝事故は、日本でもドキュメンタリー番組などで何度も取り上げられており、「奇跡体験アンビリバボー」では再現ドラマも放送されました。アンビリバボーで放送されたのは10年以上前と言われていますが、最近でもツイッターでそのことを呟く人もいます。

 

日本でもゴイアニア被曝事故が与えた衝撃は、小さくなかったようです。

2ちゃんねるで話題になった?

ゴイアニア被曝事故は、テレビや動画サイトだけでなく2ちゃんねるでも取り上げられ話題になっています。2ちゃんねるでゴイアニア被曝事故を取り上げたスレについてご紹介します。

放射線怖すぎ

2ちゃんねるでは「放射能怖すぎワロタwwwwww」というタイトルのスレで、ゴイアニア被曝事故を取りあげています。タイトルは不謹慎な感じですが、放射性物質が持ち出されてから、日を追って事故の経緯を解説するまじめな内容なっています。

 

このスレでは、メキシコで放射性物質が入った医療機器を輸送したトラックが強奪され、犯人が放射性物質に触れるという事件も取りあげられています。

恐ろしい事故

「ゴイアニア被曝事故とかいう恐ろしい事故」というスレもあります。ここでは、ゴイアニア被爆事故に関するコメントなどが掲載されています。

ゴイアニア被曝事故の悲劇を繰り返さないために

ゴイアニア被曝事故についてご紹介しました。放射性物質というと原発などを連想しがちですが、ゴイアニア被曝事故では、医療機器の放射性物質で被曝が起きています。現在は管理が厳重になっていますが、今でも身近なところに放射性物質は存在しています。

 

文明社会で放射性物質のリスクを完全に無くすことは不可能なのかもしれません。放射性物質をきちんと管理して、うまく付き合っていくことが大切でしょう。

TOPへ