記事ID132751のサムネイル画像

椎名林檎が日本サッカーの為に歌ったnippon!歌詞は本当に右寄り?

歌で独特な世界を作り出す椎名林檎。彼女が2014年のサッカーワールドカップに合わせて作った「nippon」についても、歌詞が右寄りだと言われ、賛否両論ありました。「nippon」の歌詞をもう一度分析し、椎名林檎が伝えたかったのは何だったのか考えてみました。

椎名林檎の「nippon」

「nippon」のジャケット

椎名林檎の「nippon」は、2014年の6月11日にユニバーサルミュージックから発売されたシングル曲です。

このnipponは、NHKの2014年度サッカーワールドカップ放送のテーマ音楽として起用され、2015年度以降も継続して使用され、結果的に2016年年内まで使用されました。
シングルのジャケットも、日本サッカーを前面にイメージさせるように、「日本国旗の日の丸部分が赤いサッカーボール」になっていました。

正に、日本サッカーの為に作られた曲だったのです。

「nippon」の歌詞

それでは、「nippon」の歌詞を見てみましょう。
椎名林檎らしい和を感じさせる言葉つかい、広い世界観、勢いを感じさせられる歌詞です。

万歳(Hurray)!万歳(Hurray)!日本晴れ 列島草いきれ 天晴
乾杯(Cheers)!乾杯(Cheers)!いざ出陣 我ら 時代の風雲児

さいはて目指して持って来たものは唯(たった)一つ
この地球上で いちばん
混じり気の無い気高い青
何よりも熱く静かな炎さ

鬨の声が聴こえている
気忙しく祝福している
今日までハレとケの往来に
蓄えた財産をさあ使うとき

爽快な気分だれも奪えないよ
広大な宇宙繋がって行くんだ
勝敗は多分そこで待っている
そう 生命が裸になる場所で

ほんのつい先(さっき)考えて居たことがもう古くて
少しも抑えて居らんないの
身体まかせ 時を追い越せ
何よりも速く確かに今を蹴って

噫また不意に接近している淡い死の匂いで
この瞬間がなお一層 鮮明に映えている
刻み込んでいる あの世へ持って行くさ
至上の人生 至上の絶景

追い風が吹いている もっと煽って唯(たった)今は
この地球上で いちばん
混じり気の無い我らの炎
何よりもただ青く燃え盛るのさ

NHKからの注文

この「nippon」は、NHKが椎名林檎に依頼して作られた曲です。
NHKは依頼するに際して、

「他の国同士の試合中継でも使うものの、サッカー日本代表(SAMURAI BLUE)およびサッカー日本女子代表(なでしこジャパン)を応援する曲を作って欲しい」

「(サッカー日本代表のイメージカラーである)“青”という言葉が入っているとうれしい」

「(椎名がかつて所属していたバンド・東京事変の楽曲である)『群青日和』のテンポやコード感が理想」

と要望を出しました。

椎名林檎のコメント

椎名林檎は、幼少期を静岡県の清水で過ごしており、サッカーの盛んな地域で育ちました。
そんな椎名林檎が、この「nippon」を作るに際して出したコメントは、

「幼少期を日本のブラジル・清水で過ごした自分のグルーブが、ここへ来て初めて活かされてしまうのでしょうか。開戦前夜の武者震いを何としましょう。曲にしましょう。精一杯取り組ませていただきます」

でした。
精一杯、サッカー選手の為の曲を作りたいという意気込みを感じます。

実際、曲作りをしてみて、

「(楽曲制作の依頼に対して)今まで味わったことのないプレッシャーを覚え、本当に気負って書いた」

「サッカーW杯を含め、人生に於いて時折訪れる厳しい勝負の時に絶対に勝ちに行く、そして楽しみに行く、そのすべてを込めるしかないなと、それくらい重要なミッションとして取り組んだ」

と語っていて、椎名林檎がどれくらい本気でこの「nippon」の歌詞を考え、曲を作ったのかがとてもよく分かります。

「nippon」の歌詞を批評する人たち

この椎名林檎の「nippon」の歌詞は、雑誌や評論家から色んな批評を受けました。
NHKのサッカーワールドカップ放送に流される曲でしたし、この歌詞が批評の的になるのも仕方がないことだったかもしれません。

椎名林檎が右寄りだ、「nippon」の歌詞は命を懸けて戦った特攻隊や純血主義を連想させるなどという批判が出ました。

だが、チームカラーでの「純血性」を強調するかのような<この地球上で いちばん 混じり気の無い気高い青>、特攻隊を思わせる<あの世へ持って行くさ 至上の人生至上の絶景>など、意味深な歌詞をはためく国旗の下で歌われてしまうと、さすがにいろいろ勘ぐりたくもなる。

出典:https://dot.asahi.com

でも、そんな「nippon」の歌詞に対する批判を受け、こう反応する人たちもいました。
椎名林檎のアーチストとしての表現の仕方、和の言葉の使い方などを考慮するべきだという考えを示す人もいたのです。

「デビュー当時から和の要素も含む過剰な様式美を押し出してきた人ですから、その要素が過剰に出すぎて議論を呼んでいるだけでしょう」

出典:https://dot.asahi.com

この「nippon」の歌詞が右に寄り過ぎていると言われれば、そうかも知れないなと思いますが、どのようにしてこの歌詞は作られたのでしょうか。

具体的な制作過程は公表していませんが、NHK側が要望した内容にそって、椎名林檎が歌詞を書き、曲を作ったのです。

椎名林檎も、

「(NHKから)具体的にオーダーがありました。自分の色を出さず、それを忠実に再現したいと思い作りました」

と語っています。

「nippon」の歌詞は椎名林檎からの応援歌

このように「nippon」の歌詞に様々な批評を受けた椎名林檎は、批判に対してこう答えていました。
雑誌「SWITCH」でのインタビューです。

「貧しい」
「諸外国の方々が過去の不幸な出来事を踏まえて何かを問うているなら耳を傾けるべき話もあるかもしれないが、日本人から右寄り云々と言われたのは心外。(それらの批判は)揚げ足を取られたと理解するほかない。趣味嗜好の偏りや個々の美意識の違いなどという話を踏まえた上でも、自分は誰かを鼓舞するものを書こうとはしても誰かに誤って危害を加えるようなものは書いていないつもりだ」

「死は生と同じくみんな平等に与えられるもので、勝負時にせよ今しかないという局面にせよ、死の匂いを感じさせる瞬間は日常にもある。ここを逃すなら死んだ方がマシという誇りや負けた後のことまで考えていられないという決死の覚悟をそのまま写し取りたかっただけ」

まとめ

椎名林檎は「nippon」の歌詞に、彼女の表現方法で気持ちを込め、日本サッカーを応援したかったというのは、間違いないと思います。

椎名林檎が、以前、野球のイチロー選手と対談した番組を見たのですが、とても嬉しそうに、少女のように、イチローを心から尊敬し、その野球にかける人生について興味津々話を聞いていました。

なので、同じくスポーツに生きるサッカー選手に対しても、応援する気持ちを込めて曲を作ったはずです。

ただ、その表現方法が、「nippon」の歌詞に使われた言葉が、椎名林檎の世界を知らない人には、受け入れがたい形だったかもしれませんし、椎名林檎の表現方法が、一般的だとも言い難いです。
問題は、NHKという公的なイメージのある局で、この曲が使われたという事かも知れません。

TOPへ